【北海道一周ヒッチ6】青森の夜、女子とお婆ちゃんときりたんぽ

      2018/04/15

パンを買うために遠路はるばる姫路からやってきた行動力半端ない2人組に乗せてもらい、陽が暮れるころ岩手県中部の矢巾(やはば)PAに到着。

すぐ先の盛岡で降りるという彼らと別れ、今夜はさらに北を目指すべく次の車を探す。

 

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警戒しまくり女子とのロングドライブ

だがここで手間取った。

小さなPA(パーキングエリア)なので人も車もそもそも少なく、時間帯もすでにヒッチハイクには厳しいものになってきている。

さらに盛岡のすぐ手前ということで、ここに来ているほとんどの車が盛岡で降りてしまう。

訪れるわずかな車に片っ端から声をかけるも、空振りが続く。

 

思わぬ救世主

「ヤバい、1つでも先に進もうとか欲張らずに1コ前のSA(サービスエリア)で止まるべきだったか」
「俺はここから脱出できないのか?」

そんな思いが頭をよぎる。
メンタル的にも凹みはじめ、徐々に敗色濃厚になってきた…その時。

なんとダメ元で声を掛けたソロの女性からOKをもらった。

女性1人というのはヒッチが無理なパターンの典型で、距離や方向うんぬんではなくリスクを考えて拒否されるのが普通。

しかも陽も暮れたこの時間、いきなり声をかけてきた見知らぬ男を乗せてくれるわけはないと思っていた。

ちょっと無理だろうなと思いつつも恐る恐る聞いてみたら…

これがまさかのOK。
何でもやる前から諦めたりせず、とりあえず試してみるもんだ。

 

車の運転はあまり得意じゃないんで人を乗せるのは恐いんだけど…

と話す、ちょっと不思議系の彼女に乗せてもらって何とか次の岩手山SAに到着した。

ちなみに外は、もうしばらく前から完全に夜。

 

岩手山SAの攻防

幸いさっきのPAより人は多いが、ぼんやりしてる余裕は無い。

ここまで乗せてくれた彼女を駐車場で見送った直後、すぐ近くに止まっていた車に声をかけるべく大股で近づいていく。

覗き込んでみるとこれも女性。
女の子2人組だ。

コンコン、と窓をノックして声をかけると明らかに怪訝そうな顔をされたが、もうそんなことにはかまっていられない。

とりあえず少し窓を開けてもらい、日本一周のためまずは北海道に向けて旅をしていること、その目的、これまでの旅の出来事などを話していると最初の硬さが徐々に取れてきた。

ここがキメ時だと感じた俺は、鉄板で笑わせる自信のある「ニュージーランド南島で"ある変わったおじさん"から家に招待されたエピソード」で勝負に出た。

 

……結果、俺の勝ち。笑

完全に信用を得たわけではないが、とりあえず次の花輪SA(秋田県)までは乗せてもらえることになった。

学生時代の友達同士で、休みを使って宮城から青森に行く途中だという彼女らとしばしのドライブ。

 

夜の秋田を走り抜け

車内ではさらにダメ押しとばかりに自信のネタを惜しみなくつぎ込み、何度も笑いを取って完全に仲良くなった結果、もう1つ先の津軽SAまでのOKが出た。

本当にありがたい。

津軽SAは本州最北端のSAで、ここなら直接フェリー乗り場まで行く人も見つかりそうだ。

 

 

秋田県を走り抜けた車はいつしか青森県へと入り、ついに本州最後のSAに到着した…

……が…

まさか……!?

 

tsugaru_sa

そこで見たのは、闇の中でぼんやりと浮かび上がる津軽SA。

シャッターは閉まり、ただトイレと自販機だけが光を放っている。

ここはPAじゃあない、より規模が大きいはずのSAだ。時間だってまだ21時ぐらいのはず。

それなのに、ありえない。

人っ子一人居ないなんて…

 

奈落、そして…

今日最大の衝撃を受けた瞬間。

それを見た、ここまで乗せてきてくれた彼女たちの表情も複雑だ。

 

俺は軽くパニくりながら頭の中で自問自答する。

ここまで来て……ここで野宿するしかないのか?

フェリー乗り場まであと少しなのに…

 

すがる様に辺りを見渡したその時、夜の闇に紛れていたが、駐車場の隅に1台の車が止まっていることに気付く。

僅かな希望を抱いて窓を叩き、「フェリー乗り場まで乗せてもらえませんか?」と話しかけてみるが、よくよく車内を見るとすでに定員一杯。

「悪いんだけど…」と断られる。

再び奈落に突き落とされたところにトラックが…!

駆け寄って聞いてみるが、そもそも港方向へは行かず。

しかもそのドライバーいわく、「ここは平日なら夜でもトラックが来るが、土日の晩はほとんど誰も利用しない」と。

もはや打つ手は無い。

完全に終わった……

 

…はずだった。

目的地を目前にして手段を失った俺に、天の声とも思える言葉がかけられた。

「フェリーまで送りますよ」

乗せてきてくれた子たちだ。

ここまで乗せてもらっただけでもありがたいのに、この先のフェリー乗り場までわざわざ送ってくれるという。

本当にありがたい、これ以外の言葉が見つからない。

 

青森の夜

「東北自動車道 全長680km 終点 おつかれさま」と書かれた標識の横をすり抜けて、一般道へ降りてゆく。

3日ぶりに高速から脱出だ。
そのまま3人で青森市内へ向かう。

俺にとってはこの旅で初めて見る大阪以外の街。

3人とも青森は初めてなので妙にハイテンションになっている。

 

人気の少ない道を抜け、知る人ぞ知る青森レインボーブリッジの青い光が後ろに流れた頃、やっと市街地に到着。

フェリーの時間まではまだしばらく余裕もあるので、今夜のお礼としてどこかでご飯を奢らせてもらうことにした。

メインストリート沿いに車を停められる場所があったので、降りて良さげな店が無いか辺りを探す。

そして分かったのは今日は3連休ド真ん中の土曜日、時間はまだ22時ぐらいだってのに閉まっている店の多いこと。

どこでも大阪や東京のように一晩中やっているわけじゃない、そんな当たり前のことを実感した。

 

そんな中で見つけたとあるホルモンの店。

「じゃあホルモンにしておこうか」と店の前まで行ってみると…

看板にはなんと“沖縄”の文字。

せっかくの初青森で沖縄料理ってのはさすがにってことで、これは却下。

そのままもう少し進んでみると、大きな提灯に“しょっつる”そして“きりたんぽ”と書かれた店を発見。

おぉ、いいね。なんか東北っぽい。
全会一致でここに決定。

ガラリと引き戸を開けて入ってみると、お婆ちゃんが一人、椅子から立ち上がって「いらっしゃいませ」と迎えてくれた。

ここが本当に居心地の良いお店で、美味しいきりたんぽ鍋に愛嬌あるお婆ちゃんとの会話を心から楽しませてもらった。

 

「きりたんぽ 田むら」可愛いお婆ちゃんが切り盛りするあったかい鍋の店(作成中)

 

お婆ちゃんにお礼を言って再び3人で車に乗り込み、ほどなくして埠頭へ到着。

フェリー乗船の手続きを済ませ、ここまで乗せてきてくれた事に感謝しつつ「ありがとう!」と2人が乗る車に向かって大きく手を振る。

車内からも手を振り返してくれた2人は、ゆっくりと夜の闇の中に消えていった。

 

DSCF1358

その少し後、深夜の港にフェリーが着く。

乗船開始の時を待ちながら、短いけれども濃かったこの数日間に想いを馳せる。

いよいよ本州とお別れ。明日の朝には北海道だ。

 

< 今日の移動距離 >
栃木→青森 約610km

 

【北海道一周ヒッチ7】北海道初上陸

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