【サイキックマフィア】有名霊能者による業界告発本の内容とレビュー。
2019/02/19
現在は絶版のため市場には中古品しかなく、プレミアが付いていて2万円以上もするこの「サイキック・マフィア」。
アメリカ霊能業界の闇の部分を暴いた告白本として一部で有名な本なんだけど、とにかく入手難易度が高い。今回幸運にも読む機会に恵まれたので、その内容などを共有します。
M・ラマー・キーン
この本の著者はモーリス・ラマー・キーン(Morris Lamar Keene)。
アメリカ南部、フロリダ州のタンパという街でごく普通の中流階級の家に生まれる。
専門学校の学費を稼ぐために働きだした飲食店では19才で店長を任されるなど仕事のできる男だったが、幼馴染みのラウール(仮名)との再会によってスピリチュアルの世界にハマっていくことになる。
最初は純粋な興味から、しかしスピリチュアリズムが効率の良いビジネスになると分かってからはラウールと2人で貪欲にその手法を学び、霊媒師、今で言うところのスピリチュアリストとして多数の信者を獲得し、自分たちの心霊教会を建てるに至る。
ついにはスピリチュアリズムの聖地、キャンプ・チェスターフィールドの一員に加わることを許され、そこでも他の霊能者たち以上の手腕を見せ、持ち前の独創性を活かして莫大な金を稼いだ。
交霊会では宙を舞うトランペットから霊の声を出し、エクトプラズムを可視化させ、カードを透視し、客が失くした物を出現させて多くの信者を獲得した。
しかし徐々に、善良な人を騙して金を得ることに対する自責の念に駆られていったラマーは、ある女性との交流をきっかけにイカサマの世界から足を洗うことを決意する。
本の内容
この告白本「サイキック・マフィア」は全9章。それぞれの章の内容を一言でまとめてみるとこんな感じになる。
第一章:奇跡とされるイカサマの数々
第二章:なぜ霊能者になったのか?
第三章:霊能詐欺師が集まる聖地の裏側
第四章:霊能者の金まみれの生活
第五章:交霊会のトリックについて
第六章:近代スピリチュアリズムの歴史
第七章:交霊室での性事情
第八章:イカサマとの決別
第九章:本が出版されるまでの経緯
実際に手を染めていた人間にしか分からないスピリチュアリズムの黒い部分が洗いざらい暴露されていて、興味深いと共にその闇の深さには恐ろしさも感じた。
暴露後の信者の反応
イカサマと決別することを選んだラマーは、相棒だったラウールと対立。
教会の心霊儀式を廃し、ごく普通のまっとうな教会にしようと提案したが、「それではたいした儲けにならない」と一蹴されてしまう。
そして対決の日はやってきた。
上位の信者を集めた会合の席で、ラマーはこれまでのイカサマを暴露した!
カードの透視も、霊視能力も、物質化現象も、物品引き寄せも、自動書記も、霊が鳴らすというトランペットも。
これまで見せてきたことの全てがイカサマ、嘘、トリックだったと告白した。
ラウールはそれらに対する的確な反論ができず、苦渋の表情でそれを認めざるをえなかった。
そしてラマーはこの状態を正してまっとうな(心霊主義を廃してごく普通の)教会にするか、そうでないのなら自分はこの教会から去ると宣言した。
そのやりとりを聞いていた信者たちは、信じられないといった表情でしばし呆然としていたが…
しかしある女性信者が言った。
「私はあなた(ラマー)の意見に賛成です。悪いことは正さないといけません。私たちの霊もそう教えてくれましたからね」
たった今!
「これまで見せてきた霊能力は1つ残らず全てデッチ上げ!僕らは霊の言葉を伝えるフリをしてアンタ達をずっとカモってきましたっ。霊の存在自体がぜ~~~んぶ嘘なんです」
という告白を聞いたところだっていうのに、まだ霊の言葉を根拠に意思決定するだって!!?
彼らの頭の中はいったいどうなっているのか!?
この時のメンバーの一人である資産家のジョージは、ラウールに直接「君は私を騙していたのか?」と問いかけ、本人が「イエス」と答えたのにもかかわらず…
その後もラウールと彼の見せるスピリチュアルを信じ続けている。
ラマーはこれを狂信者症候群(true believer syndrome)と呼んだ。
実はラウールは事前に「ラマーがカード透視の際にイカサマを行っていた」と信者たちに伝えていた。
先手を打って自分が告発者になることで、ラマーの発言の信憑性を落とす作戦だ。
しかし、ラウール自身が信者たちの目の前でイカサマを認めたことも事実。
それなのに結局…その場にいた信者たちのほとんどは、教会がそのままの形で存続することを望み、ラマーと数人の信者だけが教会を去ることになった。
ラマーは後に語った。
「人に嘘を信じさせるのがいかに簡単なことかは知っていたが、騙されている人々が真実を突きつけられてなお、真実よりも嘘を選ぶとは思わなかった」
狂信者症候群は詐欺師たちにとって最大の味方となる。他の面ではまったく正常に思える人が、ある特定の部分に関してはいくら論理的に説明してもけっしてその嘘を嘘と認識しない。
周囲が説得しようとすると、むしろより強固にその嘘にしがみ付いてしまう。
これの分かりやすい実例が、例えばオウム真理教。
学歴や知能は関係ない。東大卒の秀才も麻原の空中浮遊を信じて信者になった。
あれだけの大事件を引き起こした後ですら、教団から離れない人たちが多数いる。そして新しく入信する人たちも。
信じる心は恐ろしい。
「私は違う症候群」
オレゴン大学で心理学を教えているレイ・ハイマン教授は言った。
この手の詐欺に騙された人、引っかかった人を「騙されやすい人々」と考えるのは正しくない。
そう決め付けてしまうと、同時に「自分は違うんだ」という思い込みが生まれる。それが危ない。
プロの超能力者や霊能力者(スピリチュアリスト)はあなたが考えも付かない驚くべき方法で、あなたが彼らを信じるように誘導することができる。
それは100発100中ではないが、もし条件がそろえば、我々の誰もが騙される可能性がある。
それでもあなたは「自分は特に疑り深いから絶対に騙されない」と言うかもしれない。
しかし私の心理学者としてのこれまで長年の研究を踏まえて言うのなら、あなたが騙される状況を作り出すことは、おそらくそれほど難しいことではない。
まとめ
この「サイキック・マフィア」はかなり古い本ながら、実際に本場アメリカのスピリチュアル業界中枢で活動していた人物の告白として非常に興味深い。
当然ながらその影響を受けて始まった日本やその他の国々のスピリチュアル界隈も状況は同じ。
それでも「たとえほとんどが偽物だとしても、本物の霊能力者は必ずどこかにいるはずだ」と思いたい人もいるかもしれない。
確かに、絶対に居ないということを証明することはできない(悪魔の証明)けれど、その業界で全米最大規模の協会理事まで務めたラマーキーンが自分の知るすべての霊能者はインチキだと断言し、またこれまでの歴史上ただの一度も客観的に検証可能な形でそういった能力が確認された例はないこともまた事実。
それで十分なんじゃないかと僕は思います。
【関連記事】
霊能者が告白した、心霊現象(スピリチュアル)の嘘とトリック。
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