【狂犬病】ヨーロッパで犬に噛まれた体験談。ワクチンが無いので…

      2018/02/27

海外で犬に噛まれた話。

【海外事情】ヨーロッパで有料の救急車に乗った体験談。の続きです。

とりあえず噛まれた部位は縫ってもらったものの、この病院には狂犬病ワクチンが置いていない。

さぁ、どうする!?

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狂犬病は致死率100%

ここで先に狂犬病について書いておくと、主に犬を媒介とするウイルス性の感染症で、発症した場合の致死率はほぼ100%です。

日本では1950年に狂犬病予防法が施行されて予防接種が義務化された結果、7年間でこれを撲滅。世界でも数少ない狂犬病清浄地域になりました。以後国内では狂犬病は1例も発生していません。

もちろん海外では依然として狂犬病による死者は出続けていて、WHOのデータによれば2004年の一年間だけでも約55,000人が死亡。

狂犬病という名前ですが、実は犬だけじゃなくすべての哺乳類が感染の可能性があり、地域によってはキツネやコウモリ、アライグマなどからの感染もたびたび報告されています。

致死率ほぼ100%(世界で1例だけ死ななかった例があるらしいけど、それ以外は全員)という恐ろしい病気ですが、ウイルスを持った動物に噛まれたから即人生終わり…ってわけじゃありません。

狂犬病にはワクチンがあります。

本当は事前にワクチン接種しておくのが一番なんですが、噛まれた後(暴露後)でも正しくワクチンを接種すれば、発症しないようにすることが出来ます。

 

状況と選択肢

で、僕の場合は救急車で運ばれた先の病院には狂犬病ワクチンが置いていなかった。

首都にある結構大きめの病院だったんだけど、どこにでもあるってわけじゃないらしい。

ただ首都なんで、ワクチンを置いてある病院ももちろんある。そこに行って打ってもらうっていうのも1つの方法。というか唯一最善の方法なんだけれども…

ここで問題が1つ。

 

ワクチン接種回数の問題

狂犬病ワクチンは暴露前(噛まれる前)の予防であろうが暴露後(噛まれた後)であろうが、1回打って終わりじゃあなくて、例えば暴露後なら1ヶ月~3ヶ月の期間をかけて5~6回打ってはじめて効果が期待できる。

ということは僕の場合、その間ここブダペストに滞在しなきゃいけないってことで、約1ヶ月後に迫った帰国までにゴール出来ないことを意味する。

 

僕はこの時「ギリシャのアテネからポーランドのグダニスクまで、計4,000kmを自転車で走破する」というチャレンジの途中でした。

ここハンガリーまで約50日間走ってきており、およそ1ヶ月後にグダニスクに到着予定でした。飛行機のチケットもそのつもりで取ってあります。

 

多少なりともまともな人なら、何かの得になるわけでもない自分で決めた自分だけのチャレンジよりも、身体=命を優先してワクチン接種を選ぶ。

ここブダペストの病院で受けるか、または飛行機のチケットを取り直して即日帰国。日本の病院で接種を受けるか。そのどちらかになるのが普通です。

ただ僕はその時、この自己満足でしかないチャレンジを何とかしてやり抜きたい気持ちが強く心の真ん中にあって、ゴールを諦めるという選択肢は不思議と頭に浮かばなかった。

 

提案

複数回のワクチン接種が必要なら、ポーランドに向かって北上しながら途中の病院で(つまり毎回違う病院で)接種を受けたいと医師に言ってもみたけれど、1つの医療機関で回数をしっかり管理しながらやるものなんで、そのやり方ではダメだと言われた。

万事休す。

 

検査機関

それでも何か他に方法は無いかと考えていると、狂犬病の検査のために犬を専門機関に連れて行かないといけないという話が耳に入って来た。

すでに外は暗く完全に夜だったが、これからそこに行くらしい。

飼い主の娘の彼氏が運転する車に乗って病院を後にし、10分程度走ってある建物の前に着いた。

入口にいた警備の人に何か説明し、奥へと入っていくと一人のインテリ風の男性が個室で迎えてくれた。

会話していた言葉はおそらくハンガリー語。当然ながら全然理解はできなかった。

帰り道、娘の方に聞いたところ、僕を噛んだ犬をこの施設に2週間預け、狂犬病ウイルスに感染しているかどうか様子を見るという。

なぜ2週間なのか?

それは犬の場合、もし狂犬病に感染していた場合その潜伏期間は2週間程度であることが多く、そのため2週間施設で預かって異常が出るかどうかを確認するらしい。

 

博打

ということは、2週間後には僕を噛んだ犬が狂犬病なのかそうでないのかが判るということ。

もし犬が狂犬病だったらその時は、チャレンジは諦めて即最寄りの病院に駆け込んでワクチンを打ってもらおう。

逆にその犬が狂犬病でなければ、そもそもワクチンは要らないってことになる。僕はそう考えた。

 

厚労省のサイトによると、狂犬病の人間への潜伏期間は1~3ヶ月程度。

ハンガリーでは犬の潜伏期間は2週間以内と聞いていたが、厚労省のサイトには「犬の場合は2週間~2ヶ月程度」と書かれていた…。

それはつまり2週間で異常が出なくても狂犬病陽性のケースがあるってことで、後から知ってちょっとゾッとしました。

 

これは犬と人間の潜伏期間の差を考慮した上での判断だけど、もちろん人間だって仮に感染していた場合、2週間以内に発症する可能性がゼロのわけはないし、リスクのある判断だというのは自覚していました。

それでもやはりチャレンジを完遂したかった僕は、ワクチンを打たずに進むことを選択。

とりあえずその日は、噛まれた家の前まで車で送ってもらって自転車と荷物を回収、町外れでテントを張って眠りました。

 

リスタート

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翌日。朝のうちにテントを畳み、家の前で待ち合わせ。

もう一度診せに来いと言われていたので、昨日の帰り道と同じく娘と彼氏の車でブダペストの病院へ向かう。

この日も待たされて診察室に入ったのは昼頃。

手足の傷は昨日より傷みが少なく、「今日これからまた自転車で走るけど大丈夫そうですか?」と聞くと、「無理はしないように」とそれだけ言われた。

また村に戻り、自転車に荷物を積み直し、飼い主の娘とその彼氏には2週間後の連絡をくれぐれも忘れないようにと念押しして改めて東へ漕ぎ出した。

 

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腕はそんなに負担がかからないので特に問題なかったれけど、脚はその翌日にも縫っていた傷痕が開いた感触があった。

それでも次の大きな病院のある街まで進むしかないので、毎日100km弱ひたすら漕いだ。

幸い感染症とかにもならなかったけど、ただのラッキーだと思う。

 

そして2週間後

約束

2週間後。スロバキア、オーストリア、チェコを経由して、僕はポーランド南部のアウシュビッツまで来ていた。

リスタート直後に2回ほどメールのやり取りはあったものの、ここ最近は特に連絡なし。

今日あたり「陰性だったよ!」って結果報告があれば、この後リラックスして進めるのになぁ…なんて思っていたが、残念ながらその日は無し。

 

翌日も連絡が無かったので「どうだった?」とこっちからメールを送ってみたが、やはり反応なし。

さらにまた1日待って「連絡待ってるよ」と送ったが、これも返信なし。

 

まさか忘れてる…それとも連絡が面倒になった…?

こうなるとどうしても疑いの気持ちが出てくる。毎日自転車を走らせていても狂犬病のことが頭にチラつく。

 

さらに2日待ってもう一度、今度は切実さを前面に押し出した長文を送ってみた…がそれでも返事は来なかった。

 

まさか

犬を施設に預けるのだって当然費用がかかるはずで、そもそも預けるっていうのが嘘だったんじゃあと最悪のパターンを想定しだす。

向こうからしたら国外に出てもう戻って来ない相手な訳で、メールさえ無視してしまえばそれを咎められることもない。

もしそうならすぐにワクチンのある病院に行く必要がある。

 

なんせ狂犬病の致死率は100%だ。発症してしまったらもう助からない。

あと2,3日走れば首都のワルシャワなんで、着いたらすぐに病院に行ってみよう…

 

 

と、思っていたらなんと!

その日の晩メールが来た!!!

添付されていた画像は「陰性」を示す書類のようで、その瞬間心底ホッとしたのを覚えています。

 

大使館

専門機関が発行したであろうその書類は、当然だけどハンガリー語で書かれているので僕には読めない。

万が一があってはいけないんで、念のためハンガリーの日本大使館に画像を添付したメールを送って、本当に「この犬は狂犬病に関して陰性です」という書類かどうか読んでもらえませんか?とお願いしてみた。

数日待ったけれども返事は来ずに、やっぱりいきなりあんなメールを送っても無視されちゃうかと思っていたら、一週間ほどした頃に丁寧な返事が返ってきた。

なんでもわざわざその専門機関に行って、直接担当者に話を聞いてきてくれたらしい。

その結果、間違いなく犬を預かった上で経過を確認し、異常は何も無かったようですと教えてくれた。

もちろんその時も返信でお礼は伝えましたが、ここでもう一度改めてお礼を述べさせて頂きたいと思います。

在ハンガリー日本大使館の皆さん、ありがとうございました!

 

最後にお金のこと

ちなみに、噛まれた当日と翌日の医療費は犬の飼い主の方で支払ってもらったので僕的にはお金掛かってないんですが、その後傷口の様子を見てもらったり抜糸してもらうために、立ち寄り先の国で数回病院に行った際の費用は自分で払っています。

僕は年会費無料の海外旅行保険付きクレジットカードの中でも特に補償金額が多い「エポスカード」を出国前に作ってから行っていたんで、この件に関する自己負担費用は全額戻り、結果ゼロで済みました。

請求手続き、またどの辺まで補償に含まれるのかといった細かいところについては、「評判の良いエポスカードの海外旅行保険。実際に補償を受けてみた!」で書いているので興味ある人はそちらをどうぞ。

普通なら一週間程度の旅行でも数千円はかかる海外旅行保険が完全無料で付いてくるので、もしまだの人は絶対に作ってから行くことをおすすめします。

 

最後に

今振り返ってみると、この一連の事は完全に無謀だったと思います。

なので反面教師のつもりで書きました。

そして今後海外自転車旅行なんかを計画してる人は、必ず事前に狂犬病ワクチンを接種していくことを忘れないで!

接種は3回、最低でも21日間の間隔を空ける必要があるんで、日数には余裕を持って行きましょう。

 

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